大阪高等裁判所 昭和25年(う)90号 判決 1950年4月07日
被告人
森岡重一
主文
原判決を破棄する被告人を罰金三万円に処する。
右罰金を完納することが出来ないときは、金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
領置した私製紙巻たばこ一万六千本(和歌山区検察庁領置第一八七〇号)はこれを沒収する。
理由
弁護人加藤龍雄の控訴趣意第一点について。
原審第一囘公判調書を調査すると、検察官事務取扱検察事務官は証拠調のはじめに証拠により証明すべき事実を明らかにせず、いわゆる冒頭陳述をなさなかつたことは所論のとおりである。しかし本件公訴事実は極めて簡単な一個の事項であり、且つ被告人において証拠調に入る前既に公訴事実を認めている関係上検察官が証拠により証明すべき事実は自ら明らかであつて、被告人及び弁護人において容易にこれを推知し得る場合であるから、検察官において特にこれを言明しなかつたからとて被告人の防禦権行使に些かも影響を及ぼさない。従つて、前記のいわゆる冒頭陳述の欠如は刑事訴訟法第二九六条の法意に背反するものと解し難く、たといこれを以て右訴訟手続に関する法令の違反と解すべきであるとしても、その違反は前記説示に照し諒解し得る如く判決に影響を及ぼすべきものではないから論旨は理由ない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)